高校卒業後、30歳の森岡守子は初めて失業し、喜び以外何も感じない。11年以上続けていた安定した職を辞め、余暇の時間を埋めるためにすぐさま仮想世界へと目を向けた。MMORPG『Fruits de Mer』では、彼女はハヤシという堂々と自信に満ちた男性チャンピオンのペルソナを採用する。日常の期待から解放され、守子はゲームの宇宙に没頭し、すぐにリリーという優しく魅力的なヒーラーと出会う。二人は瞬時に絆を結び、守子のアバターへの愛着が深まるにつれて離れられない存在になる。彼女は新しい役割の自由を楽しみ、装備をカスタマイズし、ダンジョンを探索し、友情を築く。やがて彼女は隠れたルーティンに身を委ね、絶対に必要な時以外はアパートを出ない生活へと移行する。
守子が知らぬ間に、28歳の内気なオフィスワーカー・桜井雄太も町の反対側から『Fruits de Mer』に接続している。彼は現実世界で締め切りとオフィス政治をこなす中、創造性を抑圧するルーティンに閉じ込められたと感じている。ある晩、彼らはコンビニで偶然出会い、それをまた別のぎこちない見知らぬ人との遭遇と片付けるが、運命は彼らに別の計画を持っている。二人とも、間接的なつながりを感じており、それがやがて彼らの人生を引き合わせるだろう。